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(no subject)14
2011.08.07 Sunday
ドクターと爆弾魔君。
根底にカシジザ。
根底にカシジザ。
ガタンゴトンと揺れる列車の音だけをきいていた。
「――……ター!ドクター!きいていますか!?」
いわれ、ジザベルははっとした。鬱陶しいとでもいいたげ窓の外を見ていた視線を室内にむけると、そこには新しい部下がいた。ジザベルはその男を一瞥すると、微かに頷いて、窓の外へと視線を戻す。それをどうとったのかはわからないが、その男はまたどうでもいいことを話始める。
「――それでですね、ドクター」
先程からその男は何かとジザベルに話しかけてくるが、そのどれもがジザベルにとってはどうでもいい、意味のないものだった。その男の趣味や嗜好、特技なんて、ジザベルは何の興味もない。だから、先程からその男の話し声は耳から入ってはきていたが、内容は全て聞いた端から忘れていった。
「ドクターは無口なひとですね」
そんなことを言われるとは意外だった。とはいえ、確かにこの男とは任務に必要なこと以外ろくすっぽ会話なんていうものをしていないのだから、当然といえば当然だった
『あんた、意外とよく話すんだな』
そう言われたのはもう随分前なのか。ほんのつい最近のような気もする。あの日――彼がいなくなって以来、時間の感覚が曖昧になっていてよくわからない。
「まあ、いいです。ええと、何を話していたんでしたっけ……ああ、そうそう……」
彼がいたときは――彼が話すことならば、何でも――
窓枠に頭をもたせ、ジザベルは瞳を閉じる。脳裏には小さな姿を描いた。
あのころは、彼の話すことならば何だって良かった。お互いにあまり自分のことを話す人間ではなかったから、彼の口から発せられるのは、大概が、それこそ“どうでもいい”ような話ばかりだったけれど。それでも、彼が話すことならば、どんなに些細なことでも、他愛のない話であっても、ジザベルには大切だった。
狭いコンパートメントに二人。色々な話をした気がする。目的地につくまでの間、どうでもいい話ばかり真剣にして、笑って。疲れたらそのまま寄り添って眠ってしまった。
“あたたかくなったらさ、どっか行こうよ。緑が綺麗なところ”
“これから寒くなるのに、何言ってるんですか”
“じゃあいいよ、寒くなったらで。寒くなったら、雪の綺麗なところに行こう。約束な”
“――……考えておきます”
“ひでぇ”
冗談とも何ともつかず、彼は笑った。
素っ気ないこたえしか返せなかったけれど、内心ではジザベルはそれをとても楽しみにしていた。彼が本気で言ったかどうかもわからないのに、それでも。
とても、楽しみだった。
結局、その約束が果たされることはなく。
冬が来る前に彼は凶刃に倒れ、あたたかくなるころにはその姿形を別のものに変えて、ジザベルのもとから去っていった。
ガタン!
一際大きな振動でジザベルは現実に引き戻された。
「――で、ドクターはどう思います?」
何が?
と思ったが、ジザベルは聞き返さなかった。そうすれば、また延々と同じことの繰り返しになるのは明らかだ。それはできれば避けたかった。
そんなことはあるはずがないのだけれど――この男が話す度に彼との思い出(なんぞという殊勝なものではないかもしれないが、とにかく、それはジザベルが持ち得た記憶の中で唯一綺麗なものだった)を汚されていっているような気がした。
今更ながら、今迄の習慣で列車の切符をコンパートメント一つ分しか用意しなかったことが悔やまれる。
溜息を一つつくと、ジザベルは立ち上がった。
「ドクター!どうしたんですか!?」
気分が悪いから風にあたってくる。とだけジザベルは告げる。
「大丈夫ですか?あ、俺もお供します」
と、ついてこようとする男を、必要ありません。と制する。
次からは自腹を切っても列車の切符はコンパートメント二室分買おう。と心に決めて、ジザベルはコンパートメントを後にした。
END
結局カシジザなオチですみません。
あれ、ドクター一言も喋ってない(笑)。
「――……ター!ドクター!きいていますか!?」
いわれ、ジザベルははっとした。鬱陶しいとでもいいたげ窓の外を見ていた視線を室内にむけると、そこには新しい部下がいた。ジザベルはその男を一瞥すると、微かに頷いて、窓の外へと視線を戻す。それをどうとったのかはわからないが、その男はまたどうでもいいことを話始める。
「――それでですね、ドクター」
先程からその男は何かとジザベルに話しかけてくるが、そのどれもがジザベルにとってはどうでもいい、意味のないものだった。その男の趣味や嗜好、特技なんて、ジザベルは何の興味もない。だから、先程からその男の話し声は耳から入ってはきていたが、内容は全て聞いた端から忘れていった。
「ドクターは無口なひとですね」
そんなことを言われるとは意外だった。とはいえ、確かにこの男とは任務に必要なこと以外ろくすっぽ会話なんていうものをしていないのだから、当然といえば当然だった
『あんた、意外とよく話すんだな』
そう言われたのはもう随分前なのか。ほんのつい最近のような気もする。あの日――彼がいなくなって以来、時間の感覚が曖昧になっていてよくわからない。
「まあ、いいです。ええと、何を話していたんでしたっけ……ああ、そうそう……」
彼がいたときは――彼が話すことならば、何でも――
窓枠に頭をもたせ、ジザベルは瞳を閉じる。脳裏には小さな姿を描いた。
あのころは、彼の話すことならば何だって良かった。お互いにあまり自分のことを話す人間ではなかったから、彼の口から発せられるのは、大概が、それこそ“どうでもいい”ような話ばかりだったけれど。それでも、彼が話すことならば、どんなに些細なことでも、他愛のない話であっても、ジザベルには大切だった。
狭いコンパートメントに二人。色々な話をした気がする。目的地につくまでの間、どうでもいい話ばかり真剣にして、笑って。疲れたらそのまま寄り添って眠ってしまった。
“あたたかくなったらさ、どっか行こうよ。緑が綺麗なところ”
“これから寒くなるのに、何言ってるんですか”
“じゃあいいよ、寒くなったらで。寒くなったら、雪の綺麗なところに行こう。約束な”
“――……考えておきます”
“ひでぇ”
冗談とも何ともつかず、彼は笑った。
素っ気ないこたえしか返せなかったけれど、内心ではジザベルはそれをとても楽しみにしていた。彼が本気で言ったかどうかもわからないのに、それでも。
とても、楽しみだった。
結局、その約束が果たされることはなく。
冬が来る前に彼は凶刃に倒れ、あたたかくなるころにはその姿形を別のものに変えて、ジザベルのもとから去っていった。
ガタン!
一際大きな振動でジザベルは現実に引き戻された。
「――で、ドクターはどう思います?」
何が?
と思ったが、ジザベルは聞き返さなかった。そうすれば、また延々と同じことの繰り返しになるのは明らかだ。それはできれば避けたかった。
そんなことはあるはずがないのだけれど――この男が話す度に彼との思い出(なんぞという殊勝なものではないかもしれないが、とにかく、それはジザベルが持ち得た記憶の中で唯一綺麗なものだった)を汚されていっているような気がした。
今更ながら、今迄の習慣で列車の切符をコンパートメント一つ分しか用意しなかったことが悔やまれる。
溜息を一つつくと、ジザベルは立ち上がった。
「ドクター!どうしたんですか!?」
気分が悪いから風にあたってくる。とだけジザベルは告げる。
「大丈夫ですか?あ、俺もお供します」
と、ついてこようとする男を、必要ありません。と制する。
次からは自腹を切っても列車の切符はコンパートメント二室分買おう。と心に決めて、ジザベルはコンパートメントを後にした。
END
結局カシジザなオチですみません。
あれ、ドクター一言も喋ってない(笑)。
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